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ENOWA YUFUIN

その日のメニューは畑が決める。 その時、その瞬間、いちばん美味しい素材を味わう極上オーベルジュ

自家農場で育てた食材を、畑から直接ゲストの皿へ。大分県由布院のENOWA YUFUINは、新鮮な食材を通して心身を癒やす「ボタニカルリトリート」をかかげるオーベルジュだ。温泉のミネラルを含んだ肥沃な土地で育つ野菜を食し、静かな山の中で湯に浸かれば、明日への英気が自然と湧いてくる。

由布院の高台、
街を遠くに見下ろしながら極上の湯を愉しむ

大分県由布院。由布岳のふもとに、毎分38,600Lの湯が湧き出し源泉の数はおよそ900を誇る。日本でも有数のこの温泉地を、ゆっくり車で抜けてたどり着く高台。そこに現れるのが「ボタニカルリトリート」をかかげるオーベルジュ「ENOWA YUFUIN」だ。4万4,000㎡もの広さの敷地内に点在するのは10棟のプライベートヴィラと、ホテル棟。客室は、すべてが源泉掛け流しの露天風呂付きで、ヴィラには全棟インフィニティプールが備え付けられている。プレミアムスイートのヴィラ「ヒル・トップ・スカイ・パビリオン」は広さ165㎡、山の傾斜のもっとも高い場所に建てられていて、テラスにあるインフィニティープールに浮かべば、眼下に街を眺めながら森の間を浮遊しているような感覚に。

ヒル・トップ・スカイパビリオン、窓の外には山の景色と一体になれるインフィニティープールと露天風呂が。
165㎡の広々とした部屋で贅沢な時間を過ごせる。
夜は由布院の夜景を一望しながら露天風呂に浸かることができる。

プールの向こうに杉林が広がる「フォレスト・サイド・ヴィラ」や、瞑想のための石の座布団がある「ガーデン・サイド・ヴィラ」(ともに108㎡)など、それぞれに特徴のあるヴィラから、その旅の気分で客室を選ぶのも愉しいだろう。ホテル棟は2階建てで全9室。78㎡の空間は、無垢や土壁風の壁材などをプリミティブな素材が使用された落ち着いた空間だ。客室はすべて、壁や床に石や土、樹木など自然素材を使用。それらに華美な装飾はなく素材の質感をそのままに生かすデザインに。その部屋に飾られているのは付近に自生している花や、阿蘇の溶岩をくり抜いたオブジェなど。室内にいてもその豊かな自然を感じることができるようになっている。

ヒル・トップ・スカイ・パビリオンのバスルーム。
窓を開け放てばこちらも露天風呂のように風を感じることができる。

さらに敷地内、小高い場所にアウトドアサウナ、その名も「ヒル・トップ・サウナ」がある。薪ストーブを使ったガラス張りのサウナと、ウッドデッキの外気浴スペースからは山の緑と由布院の盆地を一望。秋から冬にかけてはここから、山にかかる雲海も見られるのだという。水風呂は1年を通して温度が16度から18度に保たれ、水深は120cmと深く、立ったまま浸ることもできるユニークな造りだ。サウナから緑を眺め、深く冷たい水と緑の風でととのう。生粋のサウナ好きも、初心者もどちらも満足させる場所になっている。

畑の開墾から料理長自ら行う Farm to tableの実践

大半の食材をENOWA FARMで調達する。

「ボタニカルリトリート」をかかげるENOWA YUFUINの最大の特徴は「食」にある。自家農場「ENOWA FARM」で育てた野菜と、自家養 鶏場の鶏や卵をレストラン「JIMGU」で提供。新鮮で安全な食材をゲストに振る舞えるだけではなく、地元の人との共同の農作業により、地域共生も叶えることができる。これは今、世界の食のトレンドとなっている「Farm to table」(農場から食卓へ)というスタイルの実践だ。

シェフ自ら毎朝必ず畑に足を運び、その日使う食材を選定する。

ENOWA YUFUINのレストラン「JIMGU(ジングー)」で料理長を務めるのは、チベット出身のタシ・ジャムツォ氏。1990年にチベット自治区で生まれたタシ氏は、18歳で渡米し、ニューヨークの複数のレストランで修業を積んだ。その後、2015年からは「Farm to table」の先駆けとなったニューヨーク郊外のレストラン「ブルーヒル・アット・ストーンバーンズ」で4年間副料理長を務めた。このレストランは32万㎡の広大な土地に畑と牧場を持ち、すべての食材を自分たちでつくってきた。タシ氏は「ブルーヒル・アット・ストーンバーンズ」での経験を由布院で再現すべく、2020年にENOWA立ち上げのため日本に移住。開業の3年前から由布院で、畑の土をつくるところからシェフとしての仕事を始めた。現在はENOWA YUFUINのエグゼクティブシェフとして、その理念を日本で実践している。

ハウスも含め、自前の畑で多種多様な野菜を育てている。
料理で廃棄になった貝殻を燃やして肥料にしている。

タシ氏ともに土を育ててきたのは、京都で料理人向けの完全オーダーメイドの野菜をつくっている、石割照久氏。「野菜づくりの魔術師」と呼ばれ、数々の名店のために野菜をつくってきた人物だ。さらに地元の農家の力を借り、旨い野菜が育つ土を研究しつくしたという。そうして開業のその日までに、ENOWA YUFUINが確信したことがある。それは、由布院ならではの野菜の旨みがあるということ。もともと由布院は標高が高く平坦な土地が少ないため、農地には向かないとされてきた。しかしその土や水には、地底を流れる温泉のミネラルが多く含まれており、じっくりと育てれば、旨みが凝縮した野菜やハーブができる。大量生産には向かずともゲストたちへ振る舞うための良質な野菜を育てるには、まさにぴったりの土地であったのだ。

極上の食材、極上のプレゼンテーション

レストラン「JIMGU」には、メニューはない。朝、タシ氏が畑に立ち、その日いちばん美味しい食材を選んでその日の料理を決めるからだ。熟しているか、大きくなっているかだけではなく、香りがピークに達していると思えばたとえ新芽の状態でも収穫、その香りをもっとも引き立たせる料理をつくりだす。その日のメニューは畑が決める。「FARM DRIVEN」と呼ばれるそのスタイルで毎日異なる料理を提供し続けているのだ。ディナーは、17時半、18時、18時半からの3部制。まずはレセプション横、インドアガーデンで育てられているハーブなどの説明を受けながら前菜をいただく。そののちにレストランに移動、気候が良ければデザートはテラスで振る舞われることも。野菜を中心に、九州各地の魚や肉など、皿数はデザートまでで17品ほど(日によって変動あり)。3時間ほどゆっくりと時間をかけ、土地の恵みを味わう。

インドアガーデンにて、収穫時期を待つ野菜やハーブに囲まれながら前菜をいただく 。
一品ごとに料理のこだわりについて丁寧な説明をいただいた。
レストラン「JIMGU」内観。

縁の輪を繋ぐ、サステイナブルな場所

土地の恵みを食したディナーをいただいた翌朝は、敷地内のガーデンを散歩するのがいいだろう。冬ならこの地にもともと自生していたツバキを生育したツバキ坂。春ならあちこちに植えられた桜を眺め、散り始める時期に敷地内にできる見事な桜桟敷を歩く。夏は実際に収穫もできるハーブガーデン、秋は山全体の紅葉に息を呑む。さらにあちこちに石のベンチが設けられた「ヒーリングガーデン」があり、ここに腰掛ければ四季折々の草木の生命力を体中に吸収できるはずだ。また腐葉土や燻製をつくる「ワーキングガーデン」では、実際に土を掘ったり植物に触れたりする体験もできる。植物に触れ、植物を食すことで、このリトリートは完成するのだ。

色とりどりの料理がテーブルを埋め尽くす。
朝食に使われる卵も、ENOWA YUFUINが所有する養鶏場からやってくる。

そもそも「ENOWA YUFUIN」とは「縁の輪」という言葉から生まれた名だ。食を通して、自然と人、地域の輪が広がっていくよう願いをこめて名づけられた。由布院の地に合った畑作りを地元の人に教えられ、畑を通してENOWA YUFUINは地域とつながる。そしてさらに九州各地の生産者ともパートナーとなって、その人の輪を広げている。「縁の輪」その名のとおり、JIMGUで扱う食材もまた「輪」によって循環している。料理の際に出た生ゴミは分解され、畑の肥料に、野菜クズは養鶏場の鶏の餌に。海が雲から生まれ雨になり、川となってまた海に流れ込む、そんな自然の循環のなかのひとつになって、この場所は今日もゲストを癒やし続ける。

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